川柳の時間11月13日放送
川柳の時間
独りごと風に消えゆく暮れの秋 カッシュママ
いろいろともの思う秋です。ポロリこぼれた独りごとをさらつてゆく秋の風。秋が美しいのは風があるからだと改めて。晩秋の風に消されてゆくものは多い。
ため口に敬語で応え秋深し 林かずき
ため口に大人対応。注意されるよりも堪えたに違いありません。シンと秋の空気感が伝わってきます。
とめどなくあふれくるもの抱く深夜 涼閑
際限なくあふれるものを両腕で受け止めていく。抱えきれなくなった頃、優しく眠りに誘われる。しっかりと眠れば全てが血肉に変わっていることだろう。まずは眠れ。
一粒を生みだしていく蕎麦の花 川端日出夫
蕎麦に限らずですが小さな花が寄り集まる蕎麦はことさらそう思わせる。あるかなしかの花のあつまりが実にかわっていく。生きるってそんな繰り返しなのでしょうか。
あの頃は先駆けだった一里塚 (猫又夏梅堂)
先頭に立って敵中に攻め入っていた証しが塚になって残る。あの頃も、これからもずっと増え続けることでしょう。
光とは違う明かりが歪みつつ 高良俊礼
ほのかにともり導いていたもの。時に消えそうで時に歪みながらも、まだ瞬いている。いつまでも一緒にいてほしい。一緒なら、生きていける。
もう時効数え終わった数え唄 徳道かづみ
長い長い数え唄。その時々を必死に生きてきた。悲喜交々の、擦り傷だらけの唄だったかもしれない。数え終わったのだから、何もかもがもう時効になっている。
渡り鳥、紅葉。近所の公園にも秋が。
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今月の一句
ファーベストおしゃれのはずがまたぎ感 彫科
うっすらと剥がれて冬は近づきぬ 凪子