3月11日たからづか8丁目35番地 川柳のじかん

今月の句と、春の気配
近所の桜が咲き始めていて、思わず足を止めました。
春はいつも突然やって来るようで、心の準備が追いつきません。
そんな季節に寄せられた句を、今月もいくつかご紹介します。

誰が揺らすのなんで揺らすの もうやめろ   徳道かづみ
15年前の東日本大震災を詠んだ句。
大阪の2ビル6階でも激しく揺れたあの日、東京はさらに大きく揺れたことでしょう。
「もうやめろ」という叫びが胸に迫ります。

三月の隙間はいつも狙われる    一橋悠実
「三月の隙間」とは何か。
誰に狙われるのか。
あえて語られない部分に、読む人それぞれの思いが入り込み、句がふくらみます。
どうか三月よ、暖かい隙間だけをつくっておくれ。災害の入り込む余地のないように。

風車止まるわたしは充電中   カッシュママ
風が止んだだけではない、何か不穏な気配を感じさせる一句。
だからこそ、この静けさを逃さず、ゆっくり休んで新年度へ漕ぎ出したいものです。
これでしっかり17音というのも見事。

ユキヤナギしがみつくよう咲いている   川端日出夫
今年はなぜか早く咲き始めた雪柳。
ふわふわ、ゆらゆらとしながらも、確かな存在感。
作者は「しがみつくよう」と見ています。
何に縋っているのかを想像すると、景色がより鮮明に立ち上がります。
「ユキヤナギ」の表記も、片仮名・平仮名・漢字で印象が変わるものですね。

生きると言う大事業 今も続いて    和音
何も考えずに生きても人生。
「大事業」と捉えてもまた人生。
その日その日で揺れ動く感情。
特に春は、その振幅が大きくなる季節です。

東風吹きていずこの記憶失せし音   高良俊礼
春、東から吹く風のかすかな音に、何かが失われた気配を感じる。
繊細な感性が拾い上げた一瞬。
梅花は今年も変わらず咲きました。

甘さしか感じぬ舌の楽しそう   康浩
甘さだけに反応する舌。
酸味も苦味も知らずに終える生。
それはそれで幸福なのかもしれません。
どちらが良いかは、誰にもわからないものです。

今月の句
東北にともる灯が照らす能登   彫科
太古から続いて絹の鎖編み    凪子

春の句は、どれも揺れ動く心や季節の変わり目をそっと照らしてくれます。
桜のつぼみがほころぶように、日々の中にも小さな光が増えていきますように。

s-image0

近所の桜が咲いてびっくりです。